平成17年4月11日


教職員の活動

 

第1回 受験生対象公開授業とアメリカ研修引率

 昨年の文化祭の折りに、受験生対象の公開授業を幾つか実施しました。その中の一つに数学の森教諭による授業がありました。そのあらましを森教諭自身が纏めたものをここに採録します。この公開授業は、参加した小学生の感想を載せましたが、好評であったと思います。
  本では中学生を毎年30名アメリカに研修に派遣する事業を行っています。今年も例年と同じ日程で、この春アメリカ バーモント州にあるセント ジョンズベリー アカデミー校に研修に行っています。この学校は本校と姉妹提携を結んでおります。
  森教諭は何年か前に、この中学生の一団を、もう一人の教諭と共に引率しました。生徒は約2週間現地にホームステイをしながら滞在し、学校にホスト スチューデントと共に学校の授業に参加します。引率の先生は空き時間を利用して、アカデミー校の生徒を対象に授業を試みました。いわば先生のチャレンジです。
  数学の先生ですので、英語のしゃべり方から事前練習をして臨んだようです。以下は森教諭が書いたものです。
 

おもしろい数列を題材に

森 昭大

かつて中学海外研修で、本校の姉妹校であるSt. Johnsbury Academyで、数列について授業をさせていただくチャンスがありました。それとほぼ同一の内容を、今度は小学生向きにアレンジして、昨年の海城祭で模擬授業を行いました。どちらも生徒たちの関心を引くことができました。円板分割は単純な規則性があるように見えて、実はその規則性が続かない、極めて特異な不思議な数列です。具体的に以下に紹介します。工夫をし、それが実を結ぶ授業をすることはなかなか難しいのですが、これからもおもしろい題材を研究し、貪欲に挑戦していきたいと思っています。

[模擬授業での問題]円の周上に異なる点をいくつかとります。それらをすべてまっすぐな線で結びます。このとき、交点がなるべくたくさんできるようにします。(つまり、3本以上の線が1つの点で交わらないようにします)
点が2個のとき、線によって分けられた部分は2部屋になります。
点が3個のとき、線によって分けられた部分は4部屋になります。
点が4個のとき、線によって分けられた部分は8部屋になります。
点が5個、6個、...のとき、部屋はいくつに分けられるでしょうか。

 

[小学生とその保護者を対象とした模擬授業に寄せられた主な感想]


いろいろ考えることができておもしろかった。(小6)
説明などもわかりやすくおもしろかった。(小6)
先生がおもしろく教えてくれるので小学校よりおもしろかった。(小6)
線のひき方を考えることがとても楽しかった。(小6)
楽しかった。数学の不思議がよくわかった。(小4)
最後、きそくで1、2、4、8、16、32だと思っていたら違っていたのでびっくりしました。(小5)
数学はきらいだがおもしろかった。(小5)
わかりやすかった予想とちがっていて少しびっくりした。(小6)
答えを出すだけでなく、理由を考えるということを学べて、いい勉強になりました。(小6)
証明の大切さを説いてとても刺激する授業。スピード感が素晴しい。(保護者)
数学の面白みをわかりやすく教えていただきました。(保護者)
すごくたのしかった。このような授業、受けさせたいし、受けたかったです。(保護者)
とても楽しい授業でした。図形の考える問題は子供にとって楽しみながら考える力がつくのではないかと思いました。(小6保護者)
限られた時間で海城が数学で大事にしているものを授業で体験させる大変難しいことに取り組んでしかも大変おもしろく有意義でした。すばらしい。(小5保護者)
とてもよかったです。また来年も来て授業を受けたいと思いました。単に答えを求めるのではなく、「なぜそうなるか」という、今全く受験でかけていることが大切と子どももわかったかと思います。(小5保護者)
国語の授業同様、短時間で集中できた楽しい授業でした。この学校を息子に受験させたいです。ありがとうございました。(小5保護者)
実際の計算結果と推定が異なる点を示し、非常に進め方が良いと感心しました。(小5保護者)
実際に数えてみたら31個になりました。不思議です。数学はおもしろいです。ありがとうございました。(小6保護者)

[St. Johnsbury Academyでの授業内容要旨]

First of all, I want to ask you a simple question.
What is the total sum of 25 successive odd numbers from 1 to 49?
Of course you can add all of them one by one to get the answer, but you can easily guess the answer after a few experiments. That is, the first 2 odd numbers 1 and 3 make 4, which is the square of 2. The first 3 odd numbers 1, 3, and 5 make 9, which is the square of 3. The first 4 odd numbers 1, 3, 5 and 7 make 16, which is the square of 4. Those examples should make it easier for you to guess the answer of the square of 25 as 625. But if you are asked for the reason why the total sum is the square of the number of the odd numbers, can you explain? Even if you can't, the drawing below will help you explain that. You will be able to convince all the students of it. With those examples in mind, it's very important to guess results and then try to prove them in math.
Now, I'll ask you another question. It's not as simple as the previous one.
First, draw an exact circle and put 2, 3, 4, 5 or 6 small dots on its circular ring. Second, connect each dot to all of the remaining dots with a straight line. In other words there must be a straight line connecting each and every dot on the perimeter of the circle. Finally, how many divided areas can you see inside in each situation? When there are 2 dots, you can see 2 divided areas. 3 dots make 4 areas, 4 dots make 8 areas, and 5 dots make 16 areas after counting carefully.
Then if there are 6 dots, how many areas do you think you will see? Please put your guess in the blank. There will be____________ areas. Practice now and try to draw and count carefully. How many areas can you see? I'm sure most of you recounted the areas because most of you may guess the result as 32. But, to our surprise, the correct answer is 31, not 32. We can conclude that guessing is of course important but it's sometimes dangerous. And proving the guess is necessary in math, too.
I hope all of you will get more interested in math and get to learn how to prove various kinds of things.

 

[おまけ]教育実習 in English(海外研修作文冊子より抜粋)


 立場上、大和先生と私は「引率教員」であったのだが、少なくとも意識の中では違っていた。引率が決まってから、何となくではあるが、単なる物見遊山の引率に終わることなく、何か積極的にSt. Johnsbury Academyの教育活動にアプローチしよう、例えば授業なぞをやってみようか、という共通理解があった。(大和先生と違って?)心配性の私は授業をやることになってからは早めに準備しなければならなかったが、英語には興味があったので時間はかかったものの、楽しく準備はできた。一時間の授業で完結する内容というのはなかなか難しいのだが、高校のカリキュラムでいうと数列、数学的帰納法にあたる内容にストーリーをつけて英文にしてみた。これを、「ほとんどnative」の奥村先生や、本物のnativeにチェックしてもらい、それをもとにSt. Johnsburyに乗り込んだ。現地の打ち合わせでは、数学の授業担当の先生方の計らいで、われわれにそれぞれ2時間、計4時間分の授業を持たせてもらえることになった。同じ授業を2回やるチャンスが与えられたのである。ここらでようやく気づいたことは、生徒はそれぞれのホストステューデントと一緒に授業を受けているため、運が悪ければ、授業を見にくる生徒がいるということだった。教室へ入り、果たして、そのいやな予感は的中した。名前は伏せるが、その生徒はこちらを見てニヤニヤしている(ように見えた)。大和先生の楽しい折り紙の授業の後、私の番になった。本番直前に考えた、しょうもない次のような自己紹介からスタートした。「森」はforestっていう意味なんです。では、「木」はどういう意味でしょう?そうです。treeですね。なんて感じである。苦し紛れである。今から思うと恥ずかしいものだが、これで結構ウケたのだから、私の国際感覚も大したもんである。授業は何回か練習していたこともあって、特につまるところはなかったが、生徒の反応を見ながら進める余裕はなかった。私が言わんとしていることは海城生を除く生徒には一応伝わったようだが、いまいち消化不良といった感じだった。もう一時間チャンスのあるのが本当にありがたかった。セカンドトライまで一時間の休憩。ここで与五沢さんからのありがたいワンポイントアドバイス。印象に残っているのは2つ。まず、生徒のfirst nameで呼ぶこと。そしてもう一つは、Are you with me so far ? という一言。アメリカの先生はこれをよく口にするらしい。日本語だと「ここまでのところはいいですか?」といったところか。be動詞と前置詞が結びついて、いかにもアメリカ口語という感じがして、これは使えると思ったのだった。
  そして2回目の授業では、名前呼びかけ作戦もうまくいき、生徒も積極的だったこともあって、無理なく授業が展開した(ような気がする)。こうなると現金なもので、もっと海城生がいてくれたらよかったのに、なんて思ったりもした。ただ、緊張のあまり、さっきのAre you with me so far ? はついに一度も口から出なかった。
  授業を通して、海城生のみならずSt. Johnsburyの生徒、先生と少しは親密になれたと思う。私は正直言って、数年前の教育実習以来の緊張を味わったが、それによって得られたものは大きかったように思う。得られたものはこれとそれとあれと、と列挙できるものではないが、私はそう確信している。