校長のメッセージ | 14 | 和田 征士 | 平成15年 3月24日 |
《 中学校社会科卒業論文発表会 》 本校では考える力、考えをまとめる力、人に自分の考えを伝え、理解してもらう能力などを育てる学習を重視しています。 それを具体化している授業のひとつが、社会科の授業であります。中学校1年、2年、3年において、各学年毎週2時間を充て、「社会T・U・V」の学校独自の科目として、独自内容のカリキュラムによって授業を行います。この授業は通常の授業とは異なる展開をしています。 生徒一人ひとりが自ら社会的な研究課題を設定します。自分の設定した課題に沿って、社会的に共有できる文献情報(書物の場合もありますし、インターネットによる情報もあります)や、Face To Face によるオリジナルな取材情報(実際には自分が設定した課題について詳しく知っている専門家へのインタビュー)、主体的なフィールドワーク体験(自分の設定した課題について、可能であれば実際にその場に行って自ら体験してみる)等を行います。その上で得られた情報を分析し、自らの見解を述べたり、場合によっては政策提言を含めてレポートを作成します。 1年生・2年生は、設定課題も易しく、レポートの分量も少なくしてあります。3年生では「社会T・U・V」の集大成として、呼び名も「卒業論文」として、分量は400字×30〜50枚を目標に、レポートを作成することにしています。 今年の中学校3年生も、2月を目処に全員がレポートを作成し、提出しました。 レポートを提出すれば授業は終了になりますが、社会科は、昨年から、「卒業論文発表会」を行っています。その目的は、卒業論文作成の努力を評価・慰労の目的を持ち、発表能力や聴く人の理解が得られるプレゼンテーション能力育成もねらっています。また、後輩への学習経験の継承や、保護者の方々への学習成果の公開という観点も重視しています。 3月12日(水)には3名の諸君の発表がありました。中学3年生全員がレポートを作成していますから、もっと大勢の人の発表の機会も欲しいところですが、時間の制約もありますので、全員が発表の機会を得るのは難しいと思いました。まだ完成しておりませんが、「卒業論文集」として、全員の題名が記され、一部の人になりますが論文が全文掲載されます。例年の収録を見ますと、論文としての形式はしっかり整っていますし、内容も充実しています。学年を追って段階を踏みますので、中学生がこんな素晴らしい論文が執筆できるのかと驚嘆するような粒ぞろいのものになります。 ものによっては、超大学級、修士論文級だと思います。実際、ある国立大学教授が同じことを伝えて下さったと聞いています。 背 景 社会T・U・Vの授業は、今から11年前より実施するようになりました。きっかけは、当時、他校も含め「知識偏重」といわれていた教育内容をどう改めたらいいか、真剣に研究した結果こういう授業に行き当たったと聞いています。 考えてみると、一般社会では、例えばある組織で問題点にぶつかり改善の必要が出てきたときには、その問題に対する原因を調べ、その問題に関する専門的知識やその背景、仕組み、問題に関わる特性の把握、法的な規定などを調べます。その後、改善の具体策に進みます。そして、策をまとめ、関係者の理解が得られるように、文章にまとめ、場合によってはプレゼンテーションして、改善の全体像について関係者の理解を推進していくようにします。 多くの分野でこのような手順を経て改善が進められていきます。 本校では、中学校・高等学校段階でも、知識だけを吸収する授業ではなく実社会で役立つ能力を育成する授業に変えていく必要があるという考え方に達したのです。 実は、この考え方が重要であるとして、国の「学習指導要領」が変更され、中学校では、今年度(平成14年度)から、高等学校では来年度(平成15年度)から全国で実施されることになりました。 名付けて「総合的な学習の時間」の実施であります。ただ、本校の方法が直接採り上げられたわけではありませんので念のため、申し添えます。国の動きの随分以前から先行して実施していた本校の先生方に対して敬意を表したいのであります。この総合的な学習の時間の審議には私も委員のひとりとして加わっていました。平成10年7月に教育課程審議会から教育課程の改善について答申が出され、総合的な学習の時間の「ねらい」についてこう述べています。「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる。情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身につける」ことをねらいとしています。学習指導要領には同様の趣旨が盛り込まれています。 このようにして総合的な学習の時間が一般化することになりましたが、じつは、これを文字通り学校で実施することになるとこれは大変なことになると多くの学校の先生は考えました。そこで大きくははずれてはいないが、その学校の特性に合致した方法を工夫しながら上に挙げたねらいそのものではない形で多くの学校で実施しているというのが実情です。クラスの中の一人ひとりの課題内容が違い、課題を決めるだけでも、手間がかかります。提出されるレポートの分量だけを考えても、先生方の負担は大変であります。 このような背景がありまして、本校が11年前に始めたユニークな授業は全国的な形で一般化しました。しかし本校の特色が薄くなったかといえば、全くそうではないといえます。 真のねらいをしっかり捉えた授業を展開しているのは、本校の他に実施している学校は多くはないと思います。授業の中身にまで踏み込んで学校の実情を調べることは大変だとは思いますが、興味のある方はやってみて下さい。 《 入試問題に込められたメッセージー2(社会科) 》 出題の意図 上に挙げた社会科の学校設置の科目のことからもご理解頂けるように、入試問題は、入学してから学校で行う授業の内容やねらいを踏まえて作成されます。 このホームページ上の前回「校長のメッセージ 23」のような考え方で臨んでいます。ご覧下さい。 去る2月に行われた中学校入試問題「社会」を今回取り上げます。この種の問題の解答は「慣れ」れば書けるようになります。練習してみて下さい。 中学校入試問題「社会」の一部.pdf(著作権の関係上公開できません) 《 年度の終わりに当たり 》 学校は、3月18日(火)に卒業式、3月19日(水)中学校・高等学校ともに終業式をもちまして平成14年度の教育課程のいっさいを終了しました。4月8日に入学式を行い、新入生を迎えます。 本校ホームページのこの欄「校長のメッセージ」は昨年9月から始めました。月2回のペースで更新して参りました。ご購読ありがとうございました。 新年度からも、この欄は月2回のペースで更新していく予定です。ご覧頂ければ幸いです。 なお、ホームページとは別に、「メール マガジン」を出しております。ひと味違った学校内容に触れることができ、本校の一層の理解に役立つと確信します。申し込みのアドレスは、このホームページに記載してあります。 |