校長のメッセージ  13 和田 征士 平成15年 3月 1日
《 入試問題に込められたメッセージ 》
 出題の意図  
 平成15年度入学生のために行われた入学試験の一部の問題をここで取り上げ、どうしてこのような問題なのか、少し触れたいと思います。今回は去る2月1日に行われた中学校国語の問題を取り上げます。
 ご覧になって皆さんの第一印象はどのようなものでしょうか。
 “難しいな”とお感じの方もおられるでしょうし、“なかなか考えた問題だな”とお感じの方もおられ、さまざまだと思います。
 知識の量を問う設問は少なめで、いわゆる、長文読解の型に属し、文章の表現を読みとる感性をまず大切にしていることが分かります。また、設問の中には問題文の中から字数を限った文章での表現を求めています。この二つが大きな特徴かなと思います。
 学校では、この二つの能力が大切だと考えて、入学試験はそれを試すような設問構成にしてあります。そして入学してからも、この能力育成に力を注げるよう授業内容が構成されています。ですから、入学試験は本校教育の入門であるとの位置づけであります。次の世代の真の担い手はどのような能力を備えているべきか、私どもは真剣に考えています。
 従来の教育は、よく言われていますように知識の量を重視する傾向が強かったと考えています。本校も例外ではありませんでした。この知識偏重教育は早晩に改めるべきであるというのは教育界の共通認識であります。本校ではこの10年くらいの間に徐々に切り替えてきました。
 受験生本人やその保護者の方の中には、趣旨は分かるがそれにしても大変だと感じる方もおられると思います。私はこれは「慣れ」の要素が大きいと考えています。特に小学生の柔軟な頭脳の間は、こうした問題のほんのいくつかに触れると、コツを会得するようにすぐ慣れて取り組めるようになるものです。最初の取り組みにチャレンジの精神が発揮できるかどうかが大きな鍵になります。 
 大学でも、このことの重要性を認識して、例えば、小論文を課す傾向もそれですが、東大の後期日程の入学試験問題などは考えを記述する問題を実施していますし、難関といわれる私立大学でも、一部そのような入試を実施しはじめています。
 背 景
 国語のこうした傾向は、以下に示すような背景を伴っています。
 昨今の社会的な状況は、10年以上にわたってデフレといわれる経済の停滞は続いています。大量生産・大量消費の時代は過ぎ、経済をはじめ、社会の構造を変えていかなければならないということは、市民の多くの共通の認識になっていると言っていいと思います。ところがそれを改めるべき処方箋は一向に出来てきそうな雰囲気さえ見あたらないといえます。暗中模索の状態です。このことは大人の責任で改善しなければならないことですが、どうも思うように運んでいないのが現状です。社会の構造を変えるには、先ず市民の認識が変わっていく必要がありますが、そういうことの前提になると思われる規範意識はむしろ低い方向に流れていっているのではないでしょうか。
 それを考えると、若い人たちの発想で世の中を変えていくしか方法がないように見えます。若い人に寄せる期待は大きくなるばかりです。

 学校としては
 そこで未来を託す有為な人材を預かる本校としては、明るい未来を開拓し、独創性・創造力に富んだ人材に育って貰うように学校の方針を定める必要があります。世の中の考え方を変えて行くには、既成概念にとらわれず現状の的確な判断と、適切な方針を確定できる能力が先ず求められます。その方針を他に伝え、理解賛同が得られる能力が次に重要であります。即ちこれは表現の能力・プレゼンテーションの能力です。
 自分の考えを表現できること、それを他人が受け止め、賛同できるような状況になることが大事なのではないでしょうか。
 的確な判断と表現能力を重く見ることはそのような背景があると考えています。そういう大人に成長して欲しいと願っています。人間性をしっかり持っている人である必要がありますし、人間関係の重視が重要でありますが、これについては別の機会に触れます。

 以下に掲げるのは国語の入試問題の一部ですが、入試問題の全部を本校事務室で頒布しています。ご利用ください。
他の教科の問題につきましては、月二回のペースで更新する次号以降に順次載せたいと考えています。
国語の入試問題の一部.pdf(著作権の関係上公開できません)

《 中学校のアメリカ研修 》
 例年3月の春休みを利用して中学3年生の希望者を対象にアメリカ研修を実施しています。今年もアメリカに行く予定で準備を進めてきました。しかし、今の世界情勢から見ると、戦争やテロを避けることが難しいのではないかと判断しました。学校としては安全を最優先しなければなりませんので、参加者とその父母とも話し合った結果、中止することに決定しました。
 大変残念であります。この機会に英会話能力を向上し、セントジョンズベリー・アカデミー校の皆さんと交流する中で、コミュニケーション能力の向上と異文化体験など、ふくらませていた夢を現実のものにすることが出来なくなりました。行くことになっていた生徒の皆さんも悔しい思いをしている人も多いと思います。私としても大変不本意であります。