中学総合講座「社会的な問題関心を拓くステップ ―生きること・働くこと・考えること― 」 第4回
中学1年生から3年生の60名ほどが参加している中学総合講座。
4回目の今回は、さをりの教室を主宰されている城達也さんをお招きしました。
さをりとは、城さんの祖母にあたる城みさをさんがはじめた手織りで、あらかじめどのように織るか決めてから計算通りに織るのではなく、それぞれの感性をいかして自由に織っていく織物です。機械のマネするのではなく、均一化、パターン化されたものから抜け出すこと、常識や既成概念から離れ自由な発想と視点をもつこと、を大切にしながら織っていくのです。
城さんは、8年前から「手織工房じょうた」を経営するかたわら、個展や作品展へ参加し、韓国でも展示を行っています。
まずはじめに、城さんは自分がさおりを始めるまでの経緯を語り、作品(今回はマフラーをたくさん持ってきれくれました)を実際に示しながらさおりについて説明してくれました。
その後、「魚の絵を描いて」と言われると、多くの人が左を向いている魚を無意識に描いてしまうことを例にあげながら、我々は知らずのうちに様々な既成概念にとらわれていることを指摘し、そういった思い込みや、頭の中にだけある価値観をこえて、自らの世界を広げていくために、「感力」を大事にする必要があると語ってくれました。
「感力」とは感性の力のことで、「知力」や「体力」とは違って、数値で測れるものではありませんが、城さんは誰もが持っているものだと言います。さをりでは、この「感力」を大切にします。知性で組み立てた設計図のようなものに従うのではなく、「感力」を生かして感性のおもくまま、織っていく。その過程で、織る人たちの者の見方、尺度が変わっていき、世界が広がっていくことがさをりの面白いところだと城さんは言います。感性を解放することで、固定化された世界の捉え方、見方が広がっていくということなのでしょうか。
自省をこめて書きますと、自分は日々の生活の中で、頭ばかりを使って、理性ばかりに頼って、物事を進めてしまうことがありますが、生徒たちもきっと同じような経験をしているだと思います。そういう彼らにとって、感性の力を大切にすることによって、自らの世界を広げていけるというお話は、大変貴重なものだったと考えます。
授業を受けた生徒の感想を引用します。
「現在は機械などの技術がとても発達しているため、織物を織るのもとても機械的な作業になっている。そのため、自由な発想、すなわち感性を使うという機械がとても少なくなっているため、さをり織りのように、感力を高めていけるようなことがとても必要だと思った、どんなことでも、自分で考え、自分で感じることがとても大切だということがとても良く分かった」
「教室に通っている人が、さをり織りによって心を開いていくのが、楽しみだと聞いて、『物』を楽しみにするのとは違うなと感じた」
「今回のお話の中で最も印象的だったのは『知力と体力だけで人を判断していたら世界は狭まってしまう』」ということです。僕も今度さをり織りをやってみたいです」
最後になりましたが、お忙しいところ学校でお話くださった城さんに厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
5回目の次回は、弁護士の今村核さんをお迎えしてお話をうかがう予定です。