生物科 「知床実習」
8月19〜22日で生物科の野外調査実習を北海道知床で行いました。参加生徒は中2〜高2までの22名。「自然と人の共生を考える」をテーマに、知床の斜里町で行われているヒグマやエゾシカの対策、知床の大自然について学んできました。お世話になったのは公益財団法人知床財団の方々。特にお世話になった知床財団の葛西真輔さんは海城のOBで、ヒグマやエゾシカの対策を専門に知床をメインフィールドに活躍されています。
今回の実習では、生徒たちに知床で学びたいテーマを決めてもらい、その内容についてインターネットや論文をもとに調べ、スライドで発表をする事前学習を行いました。
生徒たちが調べたテーマは、
・エゾシカの生態と植生に与える影響
・知床のヒグマの現状から考える人間との共生
・知床の水生生物
・知床の樹木
・知床における外来生物問題 など。
これらのテーマについて、実際にフィールドで観察しました。
1日目 知床へ移動。カラフトマスの川の遡上の観察、葛西さんによる知床の自然の講義
2日目 午前 林道での植生、エゾシカの食害、水生生物の観察
午後 ヒグマによる畑の被害、ヒグマの防護柵の見学
夜 ヒグマ、エゾシカの被害への対策についての講義・ディスカッション
3日目 午前 知床五湖で自然観察、観光が自然に与える影響の調査
午後 観光船による海からの知床半島西岸の自然の観察
4日目 海辺の生き物の観察。東京へ帰宅。
生徒たちは知床の大自然を体感し、海と山の生態系のつながりや野生生物が人へ与える影響、人が野生生物に与える影響について学びました。ヒグマに餌をやる、車から出て写真を撮るなどの観光客の行為が人里へ影響を与えるきっかけになることなどを学びました。
2日目夜のディスカッションでは、「国立公園の環境保全のあり方について」、「人が積極的に手を入れて保全すべきか」、「人はなるべく手を入れずに保護をするか」について、今回の実習で学んだことから、自らの考えを主張し、1時間30分程の白熱した議論が繰り広げられました。
昼夜問わず様々な体験ができ、とても充実した実習となりました。生徒たちの自然に対する意識も変わったように思います。今回学んだことを世界中の様々な環境保全活動を考える視点として活用してほしいです。 (生物科)
知床自然センターの前でお世話になった知床財団の方々を囲んでの記念撮影
知床の自然についてビジターセンターで葛西さんより説明をいただきました。
アメリカオニアザミ。とても鋭いとげがあり、エゾシカが食べることがありません。エゾシカの食害がひどい場所ではライバルとなる植物が食べられていなくなるため、アメリカオニアザミが繁茂しやすいです。
テンサイ畑の被害の様子。手前はヒグマの被害があった場所です。
農家の方の想いやヒグマが畑にくる理由などを葛西さんから話をしてもらいました。
ヒグマが集落に侵入しないように集落の周囲に張り巡らされている電気柵。
個体数管理のために駆除されたエゾシカを見させていただきました。
エゾシカからの食害で樹木の実生が育たないことがあるので、シカが入らないように柵で囲んだ場所があります。写真の右が柵で囲まれた場所、シカがいないと樹木の実生が育ちやすいのがわかります。左はシカが嫌う外来植物が増えてしまった「ノラニンジン」の群落。
海から知床の自然を観察するために観光船に乗りました。真ん中に写っているのは海城OBの医学部生。生徒たちの面倒をみてくれました。
帰り際に知床自然センターにより、職員の方に取材をしてから帰りました。