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 2013 海城OBによる生物科学講演会

去る3月19日、毎年恒例の「海城OBによる生物科学講演会」が講堂にて開催されました。本講演会は今回で3回目となります。意欲ある中高生60数名が参加し、貴重な時間を共有しました。

【プログラム】
12:30 開会
12:40 山田 洋輔 君(05年卒:東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻大気海洋研究所海洋化学部門生元素動態分野 博士1年)
     「海の細菌が世界を変える!?-炭素をめぐる海の仕組み-」
13:15 関口 雄輝 君(08年卒:麻布大学獣医学部獣医学科微生物学第2研究室 学士5年)
     「診断学 〜高校生物は実際にこう使う〜」
(10分間休憩)
14:00 橋本 侑樹 君(10年卒:東京大学教養学部生命・認知科学科認知行動科学分科四本研究室所属 学士3年)
     「ヒトと機械の境界線―brain machine interface」
14 35 総合質疑・閉会



山田 洋輔 君の講演。実際の航海のようすや、海中のバクテリアが炭素循環に果たす役割の最新知見など、絶対にここでしか聴けないような内容ばかりでした。


対照実験や現象の意義、研究の展望等々について、生徒からの鋭い質問が多く、毎年のことではありますが、あらためて海城生の関心の高さや発言力、理解力に驚かされました。中学生からも物怖じしない、しかも質の高い質問が数多くあり、OB曰く「海城生ってこんなにレベル高かったっけ?(笑)」。取材に入られた方からも、「生徒さんたちが活発に質問をしている様子に感銘を受けました」とのお言葉を頂戴しました。

現在の生物科学の実際を、中高の一教員が生徒に語るには当然限界があります。現在進行形で各分野で最新の情報を取り入れ、手足を動かし活躍している大学院生、大学生が生で語る内容やその質感は、何にも代えがたいと思います。本講演会が、一人でも多くの生徒の心を動かすきっかけとなれば、担当者としてこれ以上の喜びはありません。3名のOBにとってもこの会は刺激になったでしょうし、何より毎年、私が一番楽しんでしまっているのかもしれません。 (本講演会担当)


関口 雄輝 君の講演。除外診断と確定診断の違いや、多尿のイヌをいかに診断していくのかを、生徒を巻き込みながら具体例を挙げて説明してくれました。さながら犯人捜しのよう。

橋本 侑樹 君の講演。BMIの可能性や自身の次なる興味「時間間隔」について、はたまた「ココロ」はヒト以外にもあるか等々について、生徒を交えて議論しました。


最後に皆で集合写真。

以下、全校生徒に対する案内文に掲載した講演要旨です。
【講演要旨】
◎山田 洋輔 君(05年卒:東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻大気海洋研究所海洋化学部門生元素動態分野 博士1年)
     「海の細菌が世界を変える!?-炭素をめぐる海の仕組み-」
1mL中の海水にはなんと約100万匹の細菌(バクテリア)が存在しています。細菌は海洋中の有機物質を分解し取り込むことで、エネルギーを獲得し、増殖することができます。この分解により、物質は細分化・無機化され、海の炭素循環に大きな影響を与えていますが、海洋中の物質の量、細菌による物質分解の仕組み、海洋温暖化による影響など、未解明な事柄がまだまだたくさんあります。私はこれらの事象を解明するために、船に乗ったり、フィールド調査を行ったりしながら、日々研究をしています。
今回の講演では、昨年9-10月に行った、北極チャクチ海における粘着性物質の分布調査(45日間航海)、および、細菌による物質分解メカニズム解明研究の一部について、お話しさせていただく予定です。海の研究の面白さや重要性をお伝えできるよう頑張ります。皆さま奮ってご参加ください!

◎関口 雄輝 君(08年卒:麻布大学獣医学部獣医学科微生物学第2研究室所属 学士5年)
「診断学 〜高校生物は実際にこう使う〜」
皆さんは、生物を勉強していて、こんなことを何に使うんだろう? こんなことを勉強して何になるんだろ? と疑問に思ったことはありませんか? 高校生物は実は重要なことがたくさん詰まっています。というより、基礎的なことはほとんど高校生物でわかってしまいます。大学で習うことは(少なくとも獣医学科で習うことは)一見遠くの存在に感じてしまうかもしれませんが、所詮は高校生物の応用でしかありません。
今回の講演では、高校で習う生物の知識から、実際に病院に来た犬・猫の診断をしていきたいと思います。高校生が知っている知識だけでも、病気の症状からこの臓器に異常がある、この病気が疑われるといった診断が可能です。今まで習った知識をこんな風に使うんだ、こんな解釈の仕方もあるんだ、といったことを実感していただけたら幸いです。

◎橋本 侑樹 君(10年卒:東京大学教養学部生命・認知科学科認知行動科学分科四本研究室所属 学士3年)
     「ヒトと機械の境界線―brain machine interface」
ヒトの脳とコンピューターをリンクさせる、そんな電脳の世界に憧れたことはないだろうか。例えば仮想現実に生きる人類を描いた映画「マトリックス」。例えばEVAのパイロットとして戦う少年を描いたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」。電脳の世界は人々を魅了する何かを持っている。
しかし、このような技術というのは全くの絵空事というわけではない。見るだけで文字が打てるパソコン、考えるだけで動く車椅子、さらには思考を反映させて遊べるネットゲーム。実はこれらはすべて、すでに実用化されていることを、ご存知だろうか。
一般的に人間の脳活動を使って機械を使役する技術は「brain computer interface」と呼ばれ、近年その研究・開発が盛んに行われている。この講演では現在までに開発された技術の紹介とその基礎となっている研究を説明した上で、これから私がやってみようと思う実験を紹介しようと思う。


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