第4回コアSSH「数学」 マス・フェスタ参加の記
25日土曜日、大阪城に程近い天満橋の「ドーンセンター」にて行われた第四回SSHマス・フェスタへ、本校高1の恩田直登君と増田康隆君の「ポスターセッション」による参加のため出かけてまいりました。
これは、本校がSSHでないにも関らず、大阪府立大手前高校の宮城憲博SSH上席主任に参加可能か否かをお尋ねしたところ、同先生にご尽力賜り、急遽実現したものです。
SSH指定校のうち、北は青森(県立三本木中高)から南は福岡(私立明治学園)までの30校、そして海城学園を合せた31校(写真1)の生徒および教員、そして来賓の方々の総勢三百人余が、ここドーンセンターに集いました。
会場入りすると、月刊「理系への数学」へのご寄稿などで知られる明治学園の松田先生による、算額ならぬ「参加者への挑戦問題」なる掲示を発見。早速、それに答え、付箋に答を書いて貼っている生徒たちの姿がありました。祝祭をもりあげます(写真2)。
来賓は、「数学のノーベル賞」との異名をとる、かのフィールズ賞受賞に輝いた京大数理解析研の森重文先生(写真3)をはじめとした、斯界の第一人者たちで構成される、とくればこのプロジェクトの規模と格式がお察しいただけることでしょう。
発表会場はドーンセンター内の3か所で、各会場とも、午前・午後で各々5校ずつの発表で計30校。午後2時半からはポスターセッションで、そこで海城も合流します。
3会場同時進行ゆえ、全ての発表を見ることは叶いませんでしたが、いずれ劣らぬ素晴らしい研究発表(写真4)で、参加者は、生徒というよりも、はや一研究者という風情です。中高生でこれだけのものを作り上げられるのですから素晴らしい、の一語に尽きます。SSHの様々な支援が、芽吹く彼ら、彼女らの才能を花開かせている、といえましょう。
さて、折角ですので、ポスターセッションの際、私に熱心に説明してくれた全国の高校生のうちの何人かをご紹介しましょう。
松田隼一朗さん(写真5)は大阪府立大手前高校の1年生。2元一次不定方程式の解法の考察からn元一次不定方程式の解法を研究しようと思い立ったそうです。授業では勉強していないものの、必要上で迫られたので「線形代数」を独学されたとのこと。その学びの姿勢に脱帽です。
藤原秀起さん(写真6)は愛知県立岡崎高校の3年生。藤原さんはいわゆる複素関数論における「オイラーの関係式」が心の琴線に触れ,研究に努力されたとのこと。折りしも、本校の夏期リレー講座最終日である今日、小澤先生によりこの話題が扱われました。昨年のリレー講座の講義録を進呈したところ、喜んでくれました。
井上滉士さんは茨城県の私立清真学園高校の2年生。井上さんは、曜日を計算するための一般式を作成されました。「清真学園で行われているSSH数学ではどのような授業をされていますか」との質問に、「よかったら授業見学にいらっしゃいませんか」とのご厚意を下さったのが引率の法貴先生(お二人は写真7)。鹿島神宮に程近い同校へ、是非とも伺いたいものです。ご厚意に感謝申し上げます。
他にも、横浜サイエンスフロンティア高校の増田さんや、岐阜県立岐山高校の柳原さんは、今後、ご自身の研究について、私へ連絡を下さるとのこと。楽しみでなりません。
さて、そんな熱心な「数学びと」の中にあって、我が海城の二人はといいますと、恩田君は「フィボナッチ数列と互除法に関する一定理」、増田君は「円順列の一般公式」なるタイトルでポスターを作成。二人とも、堂々のオリジナルな結果です。
恩田君は、フィボナッチ数列由来の「リュカ数列」における自然数をひとつ決めたとき、それより小さい自然数との最大公約数を求める際の互除法の適用回数が最大となる自然数の存在について定理を得ました(3月に本プレスで報告済)。増田君は、代数学での群論におけるバーンサイドの定理を用いることにより、「円順列」の一般公式を見出し、なおかつ極めてシンプルな形での表現に成功しました。
二人のポスターに足を止める人は少なくなく、注目を集めていました(写真8)。ただし、急遽参加が決まったため二人が大阪入りできなかったのが残念でした。
今後、このマス・フェスタの報告集を作成するそうで、そこへは二人の結果も掲載されます。今から楽しみです。
ともあれ、熱心な数学少年、数学少女のけなげな研究態度と努力に触れ、教えられることばかりでした。そして、何より他校の若い学徒や先生方と交友を持つことができ、まことに光栄に思います。改めて宮城先生のご厚意に感謝申し上げます。ありがとうございました。
なお、写真掲載をした他校の生徒さんには、本プレスへの掲載について承諾を頂いておりますことを付記します。皆様、ご協力ありがとうございました。
(数学科)