第3回数学科リレー講座「複素数の世界」5日目
リレー講座もいよいよ、終盤戦。五日目の今日は編集子の川崎が担当致しました。
今日のテーマはリーマン面。これはその名が示すように、数学史上の大立者であるBリーマンの天才により与えられた概念です。
まずは、昨日、平山先生から紹介のあったzの複素関数のバトンを受けて、w=z^2が、w=z^(1/2)になってもやはりzの関数なのか?を問題提起。結果、zの関数とはならない(写真1)ものの、そこで「切り捨てることなく」、なんとか関数として「認め、活かす」方法はないか?と考えた末に出てきたであろうリーマンの天才と偉大な精神による卓抜なアイデアを紹介(写真2)。
そして、立体射影により、球面上の北極以外の点をひとつとると、それは必ず複素数平面上のひとつの点に対応すること、および北極は、昨日登場した仮想の「無限遠点」に対応することにすれば、複素数平面は球面と「ある意味で」同じとみなしてよいことを解説しました。
後半は、その「ある意味」とはなにか?を探求。まずは、事物の「ほどよい」分類の基準とはなにか?を考察し、今回は立体の場合についてのほどよい分類の基準とは何かを考えました。「面の数による分類」は強力、と思いきや曲面に関しては無力。さて、どうするか?との問題提起から、その一解答は「同相」にあることを解説。穴空きの多面体にも適用できるよう、一般的なオイラーの多面体定理を紹介し、穴の1つあいた多面体に対して定理を適用しました(写真3)。はてさて、同相の考え方は納得されたでしょうか。ここで、今日の前半の話題を合流させ、w=z^(1/2)の(コンパクト化された)リーマン面が球面に同相であることを示し(写真4)、これ以外の数式で表されたリーマン面が、一体、いくつの穴があいた曲面に同相になるのかという問に答える、いわゆる「リーマン・フルヴィッツの公式」を紹介し、実際に受講者と共に、穴の数を計算してこの日を終えました。
また、授業後は多くの生徒が教室に残って“位相談義”に花を咲かせていました。また、各自で持参した粘土でトーラスに同相なコーヒーカップを作ったり、実際に球面の三角形分割をしてオイラーの多面体定理を確かめていました(写真5)。
なにかと話題沢山となったこの日ですが、受講者の皆さんが思いを馳せる話題はあったでしょうか。わたくしは、リーマン面のアイデアに至ったリーマン博士の精神に、心を熱くするものを感じており、生涯に渡り留めておきたいと切に思います。
さて、明日はいよいよアンカーの登場です。ご期待ください。 (数学科)
【参加者の声】
中1 森基君
昨日までは難しいことをやっているなあ、と感じながらも先生方が丁寧に教えてくださるので理解でき、それが嬉しかったです。今日の授業では、難しいことが沢山でてきて、理解できないこともあるのに、なぜか面白く、ワクワクしながら聞けて、引き込まれたので嬉しかったです。複素数平面に無限遠点を加えることで、球面に同相になるところは特に印象に残りました。(編集子より:森くんはリーマン・フルヴィッツの公式を利用してgenus(穴の数)の計算を達者にしていたので驚きました!こちらこそ嬉しくなりました)
高1 長沼将人君
複素数の復習から始まり、いくつもの話題が出てきたにも関わらず、80分が瞬く間に過ぎていて驚きました。時に数学から離れた話題もありましたが、それすら数学的だと感じられたのは一体なんなのでしょう。不思議でなりません。印象に残ったことはリーマン面の構成です。そして、それがいくつの穴が空いている曲面に同相なのかを考えようなんて、凄いことを考えるものですね。