理科・地学部 地質巡検〜日原鍾乳洞と奥多摩鉱山
地学部は,12月23日(金)に東京都奥多摩の日原鍾乳洞と奥多摩駅周辺の巡検を行いました。このあたりは,古生代と中生代の地層でできている東京都でも非常に古い地層がみられます。奥多摩にはその古い石灰岩が広く点在し,二酸化炭素を含んだ水によって,地中の石灰岩が溶かされてできた(化学的風化)約60ヵ所にものぼる鍾乳洞が存在します。その1つが今回出かけた日原鍾乳洞です。
洞内では,天井から落ちる水滴に含まれる炭酸カルシウムが固まり,ツララのようになった鍾乳石や地面から筍(タケノコ)のように上に伸びた石筍などが見られました。いわゆる自然が作り出した地中の大空間と造形美に,昔の人がこの鍾乳洞を神格化したのがわかったのではないでしょうか。学校で習う風化や侵食など,教科書でも扱う様々な地学的現象を,実際に目の当たりにすることができ,充実した学びになりました。
奥多摩からバスに乗り東日原で降りると,日蔭の斜面にまだ残雪が…。持参した温度計では2.2℃。冬の冷たい空気を感じました。
バス停から30分弱歩き,いよいよ鍾乳洞へ。さすがに,バスも空いていました。
鍾乳洞内の地形です。ただの洞窟の道に見えますが,しゃがんで写真を撮ると,下半分が左右にえぐられているのがわかりますか?実は,このラインが昔の水面で,この高さまで水が流れていたことがわかります。こういう地形をノッチといいます。
鍾乳洞内は気温が10℃を超えるところもあります。湿度は100%近い値です。地中の温度は外気温の影響を受けにくく,年中,これくらいで一定です。冬は外気温が下がり暖かく感じ,夏は外気温が上がり涼しく感じます。前者はあまり経験しないので,それが今日のねらいの1つです(笑)。
「世紀の断層」と呼ばれる断層です。左側の平らな斜面は人間が削ったのではなく,断層によって地層がずれ,その際に境界部が磨かれてできました。鏡肌と言います。
「竜王の間」です。上から氷柱のようになっている鍾乳石とその下にできた石筍が見えます。(拡大可能)
こちらは「金剛杖」と呼ばれる石筍です。これらは1cm伸びるのに100年とも言われています。(拡大可能)
洞内は急な階段や滑りやすい場所もあり大変です。こんなところに,行かなければよいのかもしれませんが,多少,危険な場所でも注意深く行動する能力は地学部でつけたい力のひとつです。
観光用の照明がなければ暗黒の世界ですが,人間の付けた蛍光灯の光を利用して,生育しているコケが見られました,とても力強く美しく見えました。暗い洞窟でも粛々と生きているコケのような生き方をしたいなと思います。
蛇足ですが,人間は最後の写真で説明したように物事を見てしまいがちです。科学を学んだ私も「こんな暗い所で一生懸命いきているのか」なんて感じてしまいます。この気持ちはこれで良いと思いますが,一方で,本当にコケはそういう風に感じるのでしょうか。
そもそもコケに感情はないと思っていますが,仮にあるのではとして冷静に考えると,人間が十分な光を常に与えてくれていて,しかも洞窟内は気温が年中一定である。湿度は十分なので水もある。さらに,都の天然記念物なので,洞内は人間からも守られている。実は,我々が思っているより,とても良い環境なのではないでしょうか。こういう見方はロマンのある人には怒られてしまいそうですが,科学としては冷静で必要なものの見方だと思います。コケには触れましたが,説明はしていません。そこまで感じた部員はいたでしょうか?