中学二年生校外研修「寄席鑑賞&上野の森散策」
ここ数年の落語ブームのおかげでしょうか、「寄席」と書いて「キセキ」と読まれることがなくなり、きちんと「ヨセ」と読まれるようになりました。
かつて、寄席は庶民の娯楽の場であり、そしてまた五代目古今亭志ん生の曰く、「学校じゃこんなこと教えない」、いわば机上では学び得ない人情の機微を、「人間の業」の語り部たる芸人さんを通じて考えさせられる場でありました。 なるほど「悪場所(わるばしょ)」との異名をとったのも合点がいくところです。
時移り星は変わって、この日は一転、寄席が“移動教室”に早変わり。ここ上野鈴本演芸場では年間15校ほどが実施されているとのことです。
では、順を追って振り返りましょう。まずは初心者のための寄席囃子教室のあと、上野鈴本のみならず、エンターテイメントの殿堂ラスベガスでも喝采を浴びるであろう太神楽の「和助・小花」のお二人の妙技からスタート。バトンを受けたのは、生徒に人気の「たけ平」さん。活きのよい明快な話芸に一同は沸きに沸きました。続く「ロケット団」のお二人の軽妙かつ巧智な、そしてかつての悪場所を彷彿とさせるような薬味(?!)に場内は最高潮!
その興奮冷めやらぬ中登場されたのが名人「正楽」師匠。主任(とり)を引き立てつつ、自己の技芸をアピールする、真に実力ある芸人さんでなければ勤まらない“膝がわり”であることに加え、直前のコンビが場内をひっくり返した後だけに、素人了見ではやりにくいはず、と想像されますが、そこはやはり大名人。普段のトーンを変えずに、まさに春風駘蕩たる風情で鋏を入れられ、軽妙なおしゃべりもはさみつつ、ひとつ目の作品を切り終える頃には、さきほどの喧騒はどこへやら、我々一同、まさに正楽師の世界に引き込まれていたのでありました。
この日のハイライトは内田先生がモデルとなった場面(写真。正楽師匠のご好意で掲載させて頂けることとなりました)。
内田学年主任曰く、「教師生活25年、この内田にとって最高の校外研修」と言わしめたこのシーン。なるほど、“主任を引き立てる芸”とはまさにこのことと、独りごちた私でありました。
ある生徒曰く、「この師匠は人間国宝になりますね、きっと」。聞けば彼は寄席初体験。初心者にこう思わせる師の技芸の素晴らしさ。その一端は7月30日12:15NHK金曜バラエティでうかがい知れることでしょう(同番組に出演するのでお時間ありましたらご覧ください、とのお知らせを師匠より頂きました)。
主任は「菊之丞」師匠。大家の若旦那を思わせる師の風情と相俟って、正統江戸落語と思わしめる品格ある技芸で、伝統芸の奥行きを存分に味わった一同でした。
そんなこんなの、まさにあっという間の二時間でありました。寄席が初体験だという生徒が二百余名。彼らは口々に「面白かった」、「テレビの笑いがかすむ」、「また来たい!」 などと言っていました。
この日の感動をもう一度!と考える皆さん、又、寄席に足を運ばれてはいかがでしょうか。
午後はのんびりと上野の森の散策としゃれこんだ皆さんでしたが、国立科学博物館の大混雑には閉口しましたね。生徒から人気があったのは国立博物館の細川家宝物展だったようです。
真夏を思わせる上野でのこの日の校外研修。ともあれ皆さん、お疲れ様でした。
尚、後日、上野鈴本演芸場様より、「出演者が皆、すばらしい生徒さんだったと言っておりました。大変やりやすかったそうです。」とのご伝言を頂きましたことを記しておきたく思います。
(中学二年生担当者)